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広島文化賞受賞者に聞く ~古庵千惠子さん(美術・陶芸)

掲載日:2011年12月15日
そこで今回は、栄えある受賞者のお一人である呉市在住の陶芸家 古庵千恵子さんにお話を伺いました。

◆広島文化賞の受賞 おめでとうございます。
 ありがとうございます。大変有り難く感謝しております。この緊張感を大切に、今後に励みたいと思っております。

◆陶芸を始められたきっかけを教えてください。
 今でこそ陶芸教室はそこかしこにあり、書籍もあり、作陶は大変身近になっておりますが、私が興味を持った頃は、戦後10年余りを経た昭和30年代、私の身近には陶芸の片鱗さえありませんでした。そんなある日、市の公民館での文化祭にふらりと立ち寄りましたところ、書や絵画の片隅の小さな丸いテーブルに楽焼の小品がほんの数点並べてありました。それが粘土を成形し焼いたもの・陶器であると聞き、面白い!作ってみたい!と興味を覚えました。また、その頃 平凡社から出版された『陶芸全集』で、国宝志野茶碗 銘「卯花墻(うのはながき)」に出会い、強く感銘を受けました。それが今日に至る私の陶芸生活の原点です。

◆独特な形や色、タイトルが印象的ですが、どのように一つの作品として完成するのですか。
 無釉焼締(むゆやきしめ)でコーヒー色に発色する私の土は酸化物等いろいろ自分でブレンドして作り、1年ねかせてから使います。先ず何を表現したいか制作意図を決め、造形、乾燥、素焼(約800℃)と進み、施釉または化粧掛後に再び窯に入れて本焼(1,220~1,250℃)して完成となります。
 タイトルは、初めから想定している場合と、作品を眺めてつける場合と様々です。表現したい思いをタイトルに込めるのですが、それに相応しい造形に苦慮するわけです。

◆陶芸を通して社会復帰支援活動に貢献された経験をお持ちですが、陶芸のどのような魅力をそこに生かされたのですか。
 直接、社会復帰支援活動に貢献したわけではありませんが、リハビリテーション学院の学生さんに24年間、陶芸を教えてきました。
 陶芸は手先を動かす作業療法として国が認めているもので、粘土は可塑性に富み、幼児から大人まで楽しみながら作業を可能にする素材です。オリジナルな物が出来る喜びを生徒さん自身が味わい、伝えて行ってほしいという思いで臨んでおりましたが、卒業後、作業療法士となられ、病院等での作業療法に活かされていると聞き、大変嬉しく思っています。

◆今後に向けてひと言いただけますか。
 いろいろなことがありますが、嫋やかに、常に今を精一杯生きて作っていきたいと思っています。

ありがとうございました。
古庵さんの作品は、広島県立美術館東広島市立美術館ふくやま市立美術館呉市立美術館、呉市役所、広島大学サタケメモリアルホール、広島ガス(株)、京都知恩院、他に所蔵されています。
一度目にしたら忘れられない印象的な作品ばかりです。
既に出会っておられる方も多いのでは…!

平成23年11月14日 広島文化賞贈呈式にて


『語る-Ⅲ』 高さ43.5×巾43.0×奥行28.5cm (平成23年)


芸術家による「世界平和の貢献者たち」 タイ赤十字認定「ナイチンゲール芸術賞」受賞作品  『60年目の鎮魂』 高さ29.5×巾64.5×奥行36.0cm (平成22年)