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広島文化賞受賞者に聞く 〜寺沢希さん

掲載日:2021年2月1日
第41回広島文化賞、お一人目は寺沢希さん(広島市)です。

◆広島文化賞の受賞おめでとうございます。
 ありがとうございます。合唱指揮者としてこのような賞をいただけることを本当に光栄に思います。合唱は音楽のなかでも比較的地味だと思われている分野だと思います。今回そこに光が当てられたことに合唱に携わっているものとして本当にうれしく身の引き締まる思いがします。
 合唱指揮者という仕事は私を応援して下っている方、共に歌ってくださる方がいて初めて成り立ちます。今回の受賞はその方達のためにより一層励むようにとの激励と期待と考え、奢ることなくより一層努力していきたいと思います。

◆ご自身も合唱団に所属しておられますが、「歌うとき」と「指揮するとき」に感じる魅力やお気持ちは違いますか?
 基本的に音楽に向かう取り組みそのものは変わらないと思いますが、歌うときの魅力は自分で声を出し、それを人の声と合わせて一つの音楽を発信していくのが魅力ですね。一方指揮するときは自分では声を出せませんが、歌ってくださる方の声を受け止めながら、大きな流れの中で音楽を組み立てていく面白さがあります。私としては指揮者として音楽を作っていく方に魅力を感じます。歌い手としては自分を超えることはできませんが、指揮者であれば歌い手の力を合わせたら可能性は無限大です。ただ素材を台無しにしてしまうこともあり得るわけで、とても大きな責任が伴いますが。
 
◆合唱団の規模や年齢層、編成において幅広く関わっておられますが、指導する上での意識や工夫していることがありますか?
 いずれの場合も共通して歌いに来てくださる皆様の顔を思い浮かべてしっかり準備しています。ただ大人と子どもは少し違うこともあり、たとえば子どもは記憶力抜群、大人は経験豊か(笑)です。
 子どもへのレッスン中の声掛けでは楽語(フォルテやピアノといった音楽用語)を使わないよう気を付けています。安易に使うと無限の可能性のある表現を制限してしまうことがあるからです。たとえば「ピアノ=弱く」と覚えてしまうと子どもは思考停止に陥ってしまい、「ピアノで歌って」と言うと、音色の変化を伴わず単に弱くなってしまうのです。そんな時は歌詞からいろいろな音色を引き出せるよう問いかけるようにしています。もちろんこの辺は大人でもいっしょですね。バランスの問題です。
 これからも幅広い世代と関わって、子どもたちには歌の「楽しさ」を、学生の皆さんには音楽の「高み」を、大人の皆様には音楽の「深み」を合唱を通して伝えていければと思っています。

◆コロナ禍中での合唱について、今伝えたいことがありましたらお聞かせください。
 本当に大変な世の中になってしまい、合唱にはとても強い逆風が吹き荒れました。合唱等、感染の可能性が少しでもあるものはすべきではないのかもしれませんが、やはり人間は音楽をはじめとする芸術、文化抜きには生きえないものだと思います。ですからどんな形であっても続けていくことが大事だと思っています。先人たちが繋いでくれたこの文化を私たちの手で途絶えさせるわけにはいきません。
 
ありがとうございました。
今後の予定を伺いましたのでご紹介いたします。

Men's Vocal Ensemble“寺漢” 第7回定期演奏会
〜シンガーソングライター 大藤 史を迎えて〜

日時:2021年02月28日(日)14:00開演
場所:マエダハウジング安佐南区民文化センター ホール
曲目:大藤史 男声合唱組曲『僕の愛、あなたの夢』
寺沢希 男声合唱とピアノのための『慕詩−こいうた』他
※広島ゆかりのシンガーソングライター大藤史さんを迎えて男声合唱とのコラボ。寺沢さん自作の曲も演奏されます。

広島メンネルコール 第50回定期演奏会
日時:2021年7月11日(日)
場所:JMSアステールプラザ大ホール
曲目:松下耕 男声合唱組曲「風の夏」(男声合唱版委嘱初演)
※原爆を題材として名曲を男声版に編曲し演奏。この地で歌うことの意味を大事に歌いたいそうです。

寺沢希さん


指揮をする寺沢さん(手前中央)


近年の活動例(コンサートやオペラ)