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「初公開!廉塾に伝えられたタカラモノ−書画・陶磁器・漆器・硯等−」

掲載日:2019年5月1日
 備後国安那郡川北村(福山市神辺町)出身の儒学者・教育者・漢詩人の菅茶山(1747〜1827)は、漢詩人としてその名を全国に知られました。郷里の神辺に私塾(後の廉塾)を開き、自らの活動の拠点としました。
 茶山の名声が高まると、茶山との交流を求めて、全国の人々が神辺を訪れたり、旅先の茶山を訪ねてきました。そのように紡がれた縁から、多くの贈り物が神辺に届けられました。
 今回の展示では、茶山にとって「タカラモノ」であったであろう贈り物、訪れた客や塾生が使ったと思われる食器類等を紹介します。

 書画では、写真1の「双鶴図」に注目!
 文化14年(1817)に菅茶山の七十歳のお祝いとして贈られた二羽の鶴を描いている作品です。二羽の鶴は長寿と夫婦円満の象徴です。作者は、茶山の友人であった松前藩家老で画家の蠣崎波響(かきざきはきょう)(1748〜1827)の作品。波響がこの作品に込めた茶山への思いを感じられます。

 陶磁器類では、写真2の「姫谷焼」に注目!
 姫谷焼は、江戸時代の初期に短期間焼かれ、その後姿を消したため幻の焼き物といわれる色絵磁器です。現存数も少ない逸品ですが、そのうちの一枚「鉄絵飛雁楼閣山水文中皿(てつえひがんろうかくさんすいもんちゅうざら)」と呼ばれる一枚が廉塾に伝えられています。箱に「黄葉夕陽村舎什物之一(こうようせきようそんしゃじゅうもつのひとつ」と茶山が記しており、廉塾のタカラモノの一つだったことが分かります。

 漆器では、写真3の江戸幕府の元老中の松平定信(1759〜1829)から贈られた「寿盃」に注目!
 茶山の七十歳を祝うために贈られた盃で、「寿」の文字が表面に散りばめられています。書体を王義之(おうぎし)などの中国の文人たちを真似ています。松平定信を始め、白河藩士たちとも茶山は親しく交流しています。藩士であった田内月堂(たうちげつどう)からも寿盃や硯等を贈られています。他の漆器類では、廉塾で客人や塾生が使用したと考えられる漆器も展示します。

 その他にも、茶山を厚く用いた福山藩主阿部正精(あべまさきよ)(1775〜1826)から贈られたガラス製の盃や漆器の盃、正精の跡を継いだ正寧(まさやす)から贈られた盃、交流した人物たちが使用した遺物を贈られたりもしています。
 
 贈り物を大切に伝えることも、贈り主の「思い」を大切にすることです。展示された品々からそうした思いを感じ取っていただきたいと思います。
(ふくやま草戸千軒ミュージアム(広島県立歴史博物館)主任学芸員 岡野 将士)

「初公開!廉塾に伝えられたタカラモノ−書画・陶磁器・漆器・硯等−」開館30周年記念・国際博物館の日(2019)記念事業 平成31年度春の展示
【会期】平成31年4月19日(金)〜6月2日(日)
【会場】ふくやま草戸千軒ミュージアム(広島県立歴史博物館)(福山市西町2-4-1)
【開館時間】9:00〜17:00(入館は16:30まで)
【休館日】月曜日(4月29日、5月6日は開館)、5月7日(火)
【入館料】一般290円(220円) 大学生210円(160円) 高校生まで無料
※( )内は20名以上の団体料金
【問い合わせ先】ふくやま草戸千軒ミュージアム(広島県立歴史博物館)084-931-2513

写真1:双鶴図 蠣崎波響画(個人蔵)


写真2:姫谷焼 鉄絵飛雁楼閣山水文中皿(個人蔵)


写真3月:寿盃 松平定信所贈(個人蔵)