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広島文化賞受賞者に聞く 〜大島衣恵さん

掲載日:2019年3月1日
お一人目は、能楽師(伝統・民俗芸能)の大島衣恵さん(福山市在住)です。

◆広島文化賞の受賞 おめでとうございます。 
 有難うございます。歴代、素晴らしい先人が受賞された賞をいただき大変光栄に思っております。祖父・大島久見も第3回(昭和57年)に授与していただいており、感慨も一入です。

◆能の魅力についてお聞かせいただけますか? 
 私自身は子供のころから能が大好きで、謡の声や囃子の音色にワクワクと心躍らせていました。その楽しさを皆さんにもお伝えしたいと思っています。
 また舞台に立つ者としては、自分の持てる限りの真剣さと集中力を共演者とぶつけ合うことが能の醍醐味です。舞台は生もので何が起こるかわからない、自分の力不足を痛感する怖さもありますが、だからこそ挑戦し続けたいと思います。ご覧くださる皆様にも、演者の気概を感じていただけるような舞台を務めたいと思っています。

◆女性として活躍する上での喜びや難しさをどのように感じておられますか?
 能は歴史的に武士の芸能として発展した背景があり、男性的な力強さが求められる面では難しいと感じることも確かにあります。一方で能の表現は抽象的ですから、男性女性ということよりも能に向かってどのように自己を磨いていくか、演者一人ひとりが問われる芸だと感じています。性別をこえて一人の人間として、一能楽師として舞台に立ちたいと思います。

◆外国人観光客が増え続ける昨今、そのような方々にも能を楽しんでいただくポイントがあれば教えてください。
 能が描いている人の心の在りようは、言葉の壁をこえて海外の方にも通じるものです。普遍的な人間ドラマとして能を紹介できれば、共感して楽しんでいただけると思います。
 また、私が出会う海外からのお客様は皆さん、日本の文化を大変よく理解しておられます。むしろ日本人である私たちが本質を見誤らないよう、もっと学び直して発信しなければと思っています。

◆子ども達へ能に触れる機会を提供しておられますね。 
 子ども達の瑞々しい感性にはとても驚かされますし、いつも私の方が良い刺激をもらっています。身体をいっぱいに使って大きな声で謡うこと、気持ちをしっかり集中して舞に取り組むことなど、能の楽しさの原点を子ども達は感じ取ってくれているのではないかと思います。
 彼らが大人になったとき、その楽しさが心に残っていてくれるよう願っています。

◆現在取り組んでおられることや 今後に向けてひと言いただけますか? 
 子ども達や能に今まで縁がなかったという方に親しんでいただけるように、お声がかかればできるだけ出掛けて行って能を紹介しています。そのためにも私自身が能楽師として、舞台人として勉強を重ねなければと思います。福山の大島能楽堂が私にとっては一番の学びの場であり、活動のベースですので、できるだけ沢山の方に足を運んで頂けるよう、努めたいと思っています。

ありがとうございました。
 
■今後の予定
・定期公演:年4回…4月・6月・9月・11月 大島能楽堂
・「船弁慶」上演:平成31年11月2日(土)呉市文化ホール
詳細については大島能楽堂ホームページまたはFacebookからもご確認いただけます。是非お出掛けください!

大島能楽堂公演での大島さん(2017年 仕舞「船橋」)


プロの能楽師として出発点の舞台(2002年 能「西王母(せいおうぼ)」) 


弟さん 妹さんと共に子方を務める大島さん(左端)と祖父・久見さん(中央)(1986年 能「唐船」)