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ふくやま草戸千軒ミュージアム「小学校の教科書のあゆみ〜教科書に見る近現代の姿〜」

掲載日:2018年12月15日
 本展示会では、明治以降、日本の小学校で使用された教科書の変遷をたどります。 
 学校で使われた教科書は、時代によって様々です。明治時代の初め頃は、今のような専用に作られた教科書ばかりではありませんでした。教育制度が整うに連れて次第に教育内容も精選され、教育方法が研究されていく中で様々な工夫や努力が重ねられ、印刷技術の進歩も相まって教科書は「進化」していきました。
 
 写真(1)と(2)は、小学生の教科書として、初めてフルカラーで印刷された国語(写真(1))と算数(写真(2))です。昭和8年〜10年頃のことで、共に小学校1年生用の教科書です。
 写真(1)の「サイタ サイタ サクラ ガ サイタ」はとても有名な場面ですが、1年生の教科書の最初に配置されています。それまでの国語の教科書で最初に書かれているのは、「ハナ」とか「ハト」などの単語がイラストと一緒に並んだり、「ホン ガ アリマス」といった文法的な文が書かれたり、と言ったものでしたが、この教科書は、子供が実際に日常で使えるような文を最初に持ってきており、国語の教科書の「コペルニクス的転換」と言われました。戦前の日本の教育では、昭和初期には、印刷も内容も、子供の発達段階に寄り添った教科書で、授業が行われていたことが分かります。
 
 また、教科書は時代を映す鏡でもあります。特に国語の教科書の素材文や社会科で取り扱う日本の産業を見ると、今では姿を消した蒸気機関車や、炭鉱などがその時代に学ぶべき内容として取り上げられていますし、当時の生活の様子も描写されています。
 
 さらに、時代を追うごとに教科書の印刷が美しくなり、紙も上質になっていった様子や、B5判だった教科書がA4判、そしてそれより大きな教科書が登場するなど、大きさも変っていきました。中身も、白黒又は二色刷りだった昭和の教科書は、平成になるとフルカラーが当たり前になり、昭和のテレビを彩ったアニメのキャラクターが学校の教科書の中に登場するようになります。
 150年近くの教科書の歴史をたどると、その劇的な変化に驚かされます。
 
 なお、本展示会には、通常の資料展示のほかに、展示室中央に「ライブラリ・コーナー」を設けました。ここでは、明治〜平成までの約50点の教科書(復刻を含む)などを実際に手にとって御覧いただくことができます。
 是非この機会に御来館ください。
(ふくやま草戸千軒ミュージアム(広島県立歴史博物館)主任学芸員 久下実)

「小学校の教科書のあゆみ〜教科書に見る近現代の姿〜」早春の展示
【会期】平成31年1月2日(水)〜3月31日(日)
【会場】ふくやま草戸千軒ミュージアム(広島県立歴史博物館)(福山市西町2-4-1)
【開館時間】9:00〜17:00(入館は16:30まで)
【休館日】月曜日
【入館料】一般290円(220円) 大学生210円(160円) 高校生まで無料
※( )内は20名以上の団体
【問い合わせ先】ふくやま草戸千軒ミュージアム(広島県立歴史博物館)084-931-2513

写真(1):「小学国語読本 尋常科用 巻一」(昭和8年[1933])より


写真(2):「尋常小学算術 第一学年児童用 下」(昭和11年[1936])


「小学校の教科書のあゆみ〜教科書の歴史に見る近現代の姿〜」ちらし