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ふくやま草戸千軒ミュージアム「初公開!世界を驚かせた日本人の地図づくり」

掲載日:2018年7月17日
 貴重な資料が追加されいっそう充実した日本最大級の古地図コレクション「守屋壽コレクション」(広島県立歴史博物館寄託)を紹介する第3回目の展示会です。今年は、江戸時代に地図を作った人物として有名な伊能忠敬の没後200年に当たります。
 今回の展示会では、江戸時代を中心に、日本の地図作りが進歩していき伊能忠敬の日本地図が作られるまでの様子を貴重なコレクションでたどります。最近、ニュースでも話題の室町時代の日本地図「日本扶桑国之図」(にほんふそうこくのず)も初公開します。
 見どころ満載の展示会ですが、そのなかでもチラシ・ポスターのデザインにもなっている話題の資料をご紹介します。
 
 まず、「日本扶桑国之図」は、当時の日本の範囲の本州・四国・九州と周辺の島々を描いたもので一般に「行基図」と呼ばれています。地図に書かれる地名などの文字は、室町時代の初め頃の地図情報と考えられ、当時の日本全体が残っている地図としては、現存する中でも最古の可能性があります。地図との説明を受けなければ、一見、何が書いてあるのか分からないような図ですが、よく見ると、古代から中世の日本の情報が読み取れます。わずかしかない瀬戸内海の島々の中で厳島はきちんと描かれています。
 
 もう一つは伊能忠敬の地図です。この地図は伊能忠敬が文化元年(1804)に作成した東日本部分の地図の写本です。地図の端には文化4年(1807)に鈴木甘井(かんせい)という人物が筆写したことが書かれており、完成後わずか3年の間に、越後高田藩(新潟県上越市)の元重役で当時は隠居していた人物が写し取って所蔵していたことが分かります。
 文化元年の東日本図の写本は、伊能忠敬が大名家などの依頼を受けて作成した「コピー」も含めて十数種類が確認されていますが、今回展示する伊能図は、これまで確認されていなかった新事例で、筆写年代が分かるものとしては、最も古い事例です。
 伊能忠敬が生きていた時代に、彼の地図がどのように、また、どの程度広まっていたのかはっきりと分かっていませんが、完成後わずか3年後に、地方の知識人が筆写して所蔵していたという今回の事例は、そのような疑問を解くカギの一つになるかもしれません。
 
 このほかにも、初公開のものを含め、多くの貴重な資料を展示します。是非この機会に、当館の展示会を御覧ください。
(ふくやま草戸千軒ミュージアム(広島県立歴史博物館)主任学芸員 久下実)

「初公開!世界を驚かせた日本人の地図づくり」平成30年度企画展守屋壽古地図コレクション追加受託・伊能忠敬没後200年記念
【会期】平成30年7月19日(木)〜9月24日(月・休日)
【会場】ふくやま草戸千軒ミュージアム(広島県立歴史博物館)(福山市西町2-4-1)
【開館時間】9:00〜17:00(入館は16:30まで)
【休館日】月曜日(9月17日、9月24日は開館)、9月18日(火)
【入館料】一般700円(560円) 高・大学生520円(410円) 小・中学生350円(280円)
※( )内は20名以上の団体
【問い合わせ先】ふくやま草戸千軒ミュージアム(広島県立歴史博物館)084-931-2513

■関連行事はこちら→「初公開!世界を驚かせた日本人の地図づくり」関連行事

展示会のポスター


日本扶桑国之図(地図部分)


文化元年東日本伊能図