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平成26年度夏の展示「近世文人の世界―神辺に花開いた文化―」

掲載日:2014年8月1日
 ふくやま草戸千軒ミュージアム(広島県立歴史博物館)では、「菅茶山関係資料」の重要文化財の指定を記念して、8月31日まで、「近世文人の世界―神辺に花開いた文化―」を開催しています。
 菅茶山(1748〜1827)は、備後国神辺宿(福山市神辺町)出身の漢詩人・教育者として知られています。茶山の詩風は日常の風景を平明かつ写実的に表現する詩風を確立したと評価され、彼の漢詩集『黄葉夕陽村舎詩』は当時のベストセラーでした。「菅君詩を以て世に鳴る」と評されるほど、菅茶山の名は全国に知れ渡っており、多くの学者や文人たちと親交を結んでいます。指定された資料は5369点で、今回はその中から主な資料を選んで展示をしています。

 まず、著述稿本類(647点)ですが、最も多いのは『黄葉夕陽村舎詩』の草稿類です。茶山がどのように詩の選択・校正を行いながら出版に至ったのかをみることができます。
 文書・記録類(631点)は、日記や記録・文書などからなり、特に茶山の日記からは、茶山や文人たち、塾の動静などが読み取れます。
 書画類(331点)は茶山の広い交友の中から残されたもので、松前藩家老で画人の蠣崎波響(かきざき はきょう)、江戸文人画の巨匠谷文晁(たに ぶんちょう)、文人画を確立した池大雅(いけの たいが)などの画、松平定信(まつだいら さだのぶ)、頼春水(らい しゅんすい)、柴野栗山(しばの りつざん)らの書など当時の一流の文化人たちの書画があります。
 典籍類(2706点)は茶山在世時の廉塾の蔵書を中心に廉塾の教授内容を反映して漢籍や儒教書が多く、歴史や文学関係のものも含まれています。
 器物類(71点)は、主に版木で、「備後名所刷版木」が多く残されています。またアイヌ工芸品は世界最古といわれています。
 絵図・地図類(44点)は茶山が旅先で手に入れたもの、出版されたものを中心としています。中でも「松前えそ図」は蝦夷地に対する茶山の興味関心がうかがえる資料として大変興味深いものです。
 書状類(939点)は、主に茶山宛の手紙で、当時の文人たちの親交のあり方や茶山の考え方などがわかる手紙が多数残されています。

 これらの資料は、菅茶山の事績及び思想、作品を理解するうえで最も重要な資料であるとともに、江戸時代後期の茶山と文人たちの親交を伝えるものです。
 
 展示をご覧いただき、江戸時代後期に備後南部で大きな文化の花を咲かせた菅茶山の人となりを感じていただきたいと思います。
(ふくやま草戸千軒ミュージアム(広島県立歴史博物館) 主任学芸員 岡野将士)

◆会期/7月11日(金)〜8月31日(日)9:00-17:00
◆休館日/月曜日(祝休日は開館します)
◆会場/ふくやま草戸千軒ミュージアム(広島県立歴史博物館)(福山市西町2丁目4−1)
◆入館料
一般290円(220円) 大学生210円(160円) 高校生まで無料
※( )内は20名以上の団体
◆問い合わせ先
ふくやま草戸千軒ミュージアム(広島県立歴史博物館)
TEL084-931-2513

菅茶山肖像画  茶山70歳の姿を描いたもの


対嶽楼宴集当日真景図(「栗山堂餞筵詩画巻」)谷文晁画  文化元年江戸での餞別の宴を描いたもの


アイヌ工芸品  年代がわかる世界最古のアイヌ工芸品